どうして禁煙が必要なのか?
1.喫煙による健康被害をご存じですか?
タバコの中には約4000種類もの化学物質が含まれており、発がん性物質が50種以上、有害物質は200種類程度といわれています。
有名なニコチンやタールの他、一酸化炭素やアセトン、更にヒ素やカドミウムといった有害な金属も含まれています。
すでにご存じの方も多いかもしれませんが「たばこの害」について軽くおさらいしてみましょう。
読み終わったら禁煙したくなるはずです。
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喫煙者には肺癌が多い、動脈硬化や高血圧になって心筋梗塞や脳卒中等の脳心血管病変が増える…といったことはご存じかと思います。
また、ご婦人なら喫煙はお肌に良くないこともご存じのことと思います。
実は喫煙により肺癌のみならず胃癌や子宮癌をはじめ多くの癌の発症リスクが増加することはご存じでしたか?
さらに喫煙歴が長くなると肺でガス交換が行われる場である肺胞の壁が厚くなって酸素が全身に供給されなくなり最終的に窒息死に至る肺線維症をはじめ慢性閉塞性肺疾患も増加します。
また、動脈硬化から両下肢の動脈閉塞に因る歩行不能や脳血管障害による認知症。
更にアルツハイマー型認知症、骨粗鬆症による大腿骨や腰痛、胸椎の骨折などから二次的に寝たきりに陥るリスクも増加します。 -
ある意味「タバコの害」で一番問題になるのは本人の意思に関係なく喫煙者の火が付いたタバコから立ち上る副流煙に含まれる有害物質の吸引。
つまり受動喫煙に因る健康被害でしょう。
受動喫煙によっても喫煙者同様、喘息や慢性閉塞性呼吸器疾患や脳梗塞や心筋梗塞のような脳心血管障害が生じ、全世界で毎年600,000人もが受動喫煙でなくなっています。
我が国においても受動喫煙による有害事象を肺癌と虚血性心疾患のみに限定しても年間6800人もの方が亡くなっています。 -
妊娠中の喫煙はやはり胎児に悪影響を与えます。
では、ママが禁煙すればいいだけなのでしょうか?
いえいえ、パパがお家で喫煙をしていると当然、妊娠中のママも受動喫煙していることになってしまいます。
おなかの中の赤ちゃんが子宮内発育遅延となるリスクは2倍以上、出生時体重も平均から150gほどが小さくなってしまいます。
-5%の体重減少といえば結構大きな影響です。因みに喫煙により赤ちゃんが低出生体重児に成るリスクは1.5倍以上に成ります。
話題がそれますが、曾て妊婦さん達の間で「赤ちゃんは小さく産んで大きく育てよう」という動きがあった時期もありましたが…赤ちゃんの発育を抑えることで、赤ちゃんは予備力不足となり、出生直後に低血糖や低体温等のトラブルに見舞われやすく成るばかりでなく、将来のメタボにつながることもわかってきました。
話題を喫煙に戻しましょう。
喫煙のみならず受動喫煙でも早産リスクが高まります。
早産とは赤ちゃんが未熟な体の時期にお母さんのお腹から追い出されてしまうこと。OGCS(大阪府産婦人科診療相互援助システム)の取り決めで、妊娠34週以下での早産リスクが高い赤ちゃんがお腹にいる妊婦さんの母体搬送は原則、NICU(新生児集中治療室)を有する医療機関に搬送することになっています。
と申し上げれば30週代前半の早産が赤ちゃんにとっていかに負担に成るのかがご理解いただけると思います。
小さなお子さんの受動喫煙による健康被害も甚大です。
中耳炎や喘息はもとより乳児突然死症候群や胎児性癌或は小児癌といった深刻な被害のリスクも高まります。
因みに乳児突然死症候群リスクはパパかママの片親の家庭内喫煙で2.5倍に、パパとママ、両親が共に喫煙している場合は5.7倍にもなります。
一方、小児癌のリスクはパパが喫煙者の場合に2倍に、お子さんと一緒にいる時間がより長い傾向にあるママが喫煙者の場合は5倍に、そしてパパとママ、両親がともに喫煙者の場合は10倍になるとの報告もあります。
2.どうして禁煙は難しい?
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「禁煙なんていつでもできる」と楽観視していませんか?
現在、喫煙者の3人に1人が「タバコをやめたい」と思っています。
ところが、喫煙者の割合は、あまり減っていません。
つまり、タバコをやめたいとは思っていても、禁煙に成功している人は多くないということです。
外国の調査でも、禁煙に挑戦して6ヶ月以上続いた人は、わずか1割ほどです。
禁煙を続けるのは、案外と難しいことなのです。「いや、自分は意志が強いから大丈夫!」なんて思っておられませんか? -
タバコを吸うと落ち着く或はイライラ解消になる…喫煙者の方々からしばしば頂戴するお言葉ですが…
実は、この状況で既にニコチン依存症でしょう。
タバコを吸うと、ニコチンは脳にあるニコチン受容体に結合します。
すると、快感を生じさせる物質であるドパミンが大量に放出され、脳に働きかけるので、喫煙者は快感を味わうことができます。
これが、「タバコを吸うと落ち着く」「ホッとする」といった効用が得られるしくみです。
しかし、30分もすると体内のニコチンが切れて、反対にイライラする、落ち着かないなどの離脱症状、いわゆる禁断症状があらわれます。
そして、その離脱症状を解消するために、またタバコを吸うようになり、そうしてニコチン依存症になっていきます。
厄介なことに、ニコチンは依存性の非常に強い物質で、危険薬物のヘロインやコカインよりも依存の危険が高いと言われ、一旦ニコチン依存症になってしまうと、ヘロインやコカインをやめるのと同じくらい難しいといわれています。
いつでもタバコをやめられると思っていたのに、なかなかやめられないのは、このニコチン依存症が原因なのです。
自分の意志の力だけで乗り越えられないのも当然といえるでしょう。
3.禁煙の推進は国際公約!
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約」をご存じですか?
WHO(世界保健機関)で採択され、2005年に発行した国際条約で締結国は170カ国規格にのぼり、日本も条約批准国の1つです。
この条約はタバコの使用及びその煙に晒されることの広がりを継続的かつ実質的に減少させるため、締約国が自国においてタバコの規制のための措置についての枠組みを提供することにより、タバコの消費およびその煙に晒されることが健康、社会、環境および経済に及ぼす破壊的な影響から現在および将来の世代を保護することを目的としおり、日本も2005年にはこの条約の批准国となっているのです。
要するに日本は世界のほぼ全ての国に「日本もタバコ吸う人を減らすために頑張るよ!」と約束しているわけです。